Hさん、男性75歳、大手企業役員の場合

相談内容

セミナーでお会いしたHさんは、数億円の資産をお持ちで、人柄温厚のすばらしい方でした。
そんな立派なHさんの相談内容は「投資がうまくいかないので、どう改善したら良いか?」というご相談でした。

診断結果は「投資をする必要なし」

確かにHさんのポートフォリオは問題が多かったです。
銀行、信託銀行、証券会社と、現役時代から資本関係にあった大手金融グループとお付き合いされていて、国内株から海外債券、外貨建てファンド、仕組み債など多様な商品を買わされていました。
そして、ほとんどが損をしています。

私の診断は簡単でした。
「Hさんは投資なんかする必要のない方です」

Hさんはキョトンと私を仰ぎ見ました。
「どうしたら良いかではなく、する必要がないですと?」

Hさんは3人の息子さんがいますが、みなさん独立されて、今は奥様と二人暮らしです。
私は、お二人が長生きして、自由に人生を楽しむのにいくらお金が必要かを、ヒアリングをしながら計算していきました。

お金に恵まれている人ほど、大贅沢をしたいなどと思っていないもので、想像通り質素な願望でした。
投資などしなくても今持っている資産で十分に足りるワケです。

お金を増やす必要がないと分かるとHさんのお顔はすっとゆるみ、笑みがこぼれました。
気が楽になられたのです。

本当に必要なことは何ですか?

しかし、面談はここで終わりません。
「人生でやっておきたいことは何ですか?」と伺いました。
一つの心配は自分の相続でした。

今の資産額は夫婦二人で使い切れるものではないことが分かりました。
今度は、それが残ったときに子どもたちが争いなく、分ける道筋を作っておきたいと思われたのです。
幸い、お二人とも健康そうで、相続発生もずいぶん先のことになると思いました。
そこで時間をかけてどういう理想的な家族関係を築いたらいいかをお話ししました。

私がご提案したことは、息子さんたちに生前贈与を続けて、その資金を相続税納税資金として運用することでした。
相続のもっとも汎用性のある対策は、下手な節税策ではなくて、たっぷりと納税資金を作っておくことだからです。
ご本人の投資は中止、そしてご子息たちに強制投資をさせるというプログラムです。

Hさんのまったく思わぬ方向に結論が出てきたことにとまどっていました。
そこで、今までお付き合いのある巨大金融機関にこの結論を伝えてみてくださいと申し上げました。

診断後の巨大金融機関の対応

それから二ヶ月かかってHさんの元に届いた巨大金融機関のご意見は、私の予想通りのものでした。
「今は投資に適する環境にない」との助言でした。
驚きますよね。

投資する必要のない老人に攻撃的な投資をさんざん勧誘して損を積み上げてさせておきながら、時間をかけて資産作りができる若者の投資には保守的な見解で投資を思いとどませる。
こんなお粗末な助言のおかげで、どれだけの不幸がこの国に築かれていることか。
Hさんもすっかり考えを改めて巨大金融機関とのお付き合いを打ち切られました。

ご子息たちに贈与してもまだ資産が余るようだったら、「若い日本の技術者たちのために財団法人を作って貢献しましょう」。
これは私の勝手な提案でしたが、Hさんの目は一瞬きらりと光りました。
だれでも私財を肥やすことより、世の中の役に立つことの方が上等だと思っているのです。

  1. 診断事例 Aさん 30歳 男性
  2. 診断事例 Hさん 75歳 男性 大手企業役員