「絶望の国の幸福な若者たち」で視点が変わった

古市 憲寿
講談社
発売日:2011-09-06

今の若者は大変だなあ〜、オジさんたちは簡単にそう思ってしまう。年金不安、雇用の圧縮、財政破たんなどなど将来を不安にさせる話題にはこと欠かない。

しかし、この本を読んで、考えが変わった。今の若者たちはそんなに不幸ではない。むしろ幸せなんだ。時代に適応して逞しく生きている若者像を知り、かなり安心した。若者を心配しているオジさんの方が不安を膨らませていたのだ。

徳富蘇峰の人格五類型化は、今の世の中でも立派に通用する。
安定志向の模範青年、自己中で金持ちになることだけを目指す成功青年、生きづらさを感じてひここもる煩悶青年、肉欲の奴隷となり退廃的な日々を送る耽溺青年、自分を持たずに付和雷同的に流される無色青年。

若者をいつも叱咤する石原慎太郎都知事にも著者の批評はひるまない所が痛快。「太陽の季節のころの社会がいかに石原という若者にチャンスを与えてくれたか忘れている」



若者論は大人の自分探しである。というなぜなら、自分が年をとって世の中に追いついていけなくなっただけなのに、それを世代の変化や時代の変化と勘違いしてしまうのである。ごもっとも。

表面的な世代論が間違っていることも立証してくれた。
・社会意識に対する世論調査、30年足らずで、実に社会のために役立ちたい若者が2倍にもなったことを証明している。
・不況だ格差だと叫ばれている最近の方がバブル時代よりもよっぽどみんな留学している。海外で働く若者も増加傾向にある。

半数以上の若者が、自分のことを「幸福だ」と感じながら、同時に「不安だ」とも思っている。幸せな若者の正体。今日より明日がよくならないと思うとき、人は今が幸せと答えるのである。幸せな若者の正体はコンサマトリー、それは「今、ここ」の身近な幸せを大事にする感性

もはや共通の目標や生きがいが喪失した時代において、若者達は政治に対して無力感と無関心を抱き私生活へのとじこもりが起きている

1970年代と1980年代は日本中がいい学校、いい会社、いい人生という中流の夢に支配された、メリトクラシーと組織化の時代だったといえる。それはコンサマトリーな価値観を持った若者も企業で社畜として働くことで若者を卒業していく時代だった。
だけど1990年代以降、中流の夢が壊れ企業の正式メンバーにならない若者が増えていく中で、いつまでもコンサマトリーでいられる若者が増えていった。

2005年世界価値観調査によると、もし戦争が起こったら国のために戦うかという設問にはいと答える日本人の割合は15.1%だった。調査対象24カ国中、最低の数値である。スウェーデンは80.1%、中国は75.5%、アメリカは63.2%。だけど著者は歓迎すべきことと思ってる。

著者は「いくら「1億円得する」と言われても、団塊の世代にはなりたくない」と言い切る。昔って今より注射は痛かったらしいし、公害はひどかったし、海外のチョコを手軽に買えないし、携帯電話もない。いくら「これからの」経済成長が約束されているとはいえ、どうせなら今が豊かな方がいい。

生活保護、自殺、いずれも若者より高齢者の問題。貧困や自殺という切実な問題に直面しているのは若者世代よりも高齢者世代なのだ

恋人がいる若者は3割
承認欲求を最もシンプルに満たすためには、恋人がいればいい。全人格的な承認を与えてくれる恋愛は、その人の抱えるほとんどの問題を
少なくとも一時的には解決してしまう。だって、たった一人から愛されるだけで誰もが「かけがえのない存在」になることができるのだ。

もしかしたら、日本という国は民主主義という制度の構築に失敗したのかもしれない。民主主義を犠牲にして経済成長を選んだことにより、世界有数の経済大国となった日本。いま僕たちはその埋め合わせをしているかもしれないのだ。

移民労働力の受け入れを拒否し続けてきた日本では、女性に加えて若者を2級市民として扱うようになった
1億総若者化時代
日本中の人々が年齢に関係なく若者化する時代、その過渡期にいる
では、若者たちを大量に抱えたこの国は、どこへ向かうのだろうか。
確かなことがあるとすれば、僕たちには戻るべきあの頃なんてないことだ。

一人一人がより幸せに生きられるなら日本は守られるべきだが、そうでないならば別に日本にこだわる必要はない。だから、僕には
日本が終わると焦る人の気持ちがわからないし、日本が終わる?だから何?と思ってしまうのだ。

日本にこだわるのか、世界中どこでも生きていけるような自分になるのか、難しいことは考えずにとりあえず毎日を過ごしていくのか。
幸いなことに、選択肢も無数に用意されている。経済大国としての遺産もあるし、衰退国としての先の見えなさもある。
歴史的に見ても、そんなに悪い時代じゃない。
戻るべきあの頃もないし、目の前に問題は山積みだし、未来に希望なんてない。だけど現状にそこまで不満があるわけじゃない。
なんとなく幸せで、なんとなく不安、そんな時代を僕たちは生きていく。
絶望の国の、幸福な若者として
最後まで読了ありがとうございます。ちなみに著者の古市憲寿さんは1985年生まれの27歳。

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